甲子園で優勝した監督の本を読み比べてみました 慶應義塾と仙台育英

2023年も夏の甲子園が終わりました.決勝は,2022年の優勝校で連覇を目指した仙台育英高校と,107年ぶりの優勝を狙う慶應高校の試合となり,8-2で慶應高校が勝利しました.

 

慶應高校を率いたのは,森林貴彦(もりばやし たかひこ)監督です.慶應高校のOBで,2015年から監督に就任.慶應義塾幼稚舎(小学校)の先生をしながら,高校生の指導をしています.

仙台育英高校を率いたのは,須江航(すえ わたる)監督です.仙台育英高校のOBで,2018年から監督に就任しました.

 

このお二方,実は本を出版していました.

慶應の森林監督の本が,「Thinking Baseball慶應義塾高校が目指す”野球を通じて引き出す価値”」です.


Thinking Baseball --慶應義塾高校が目指す”野球を通じて引き出す価値” [ 森林貴彦 ]

 

仙台育英の須江監督の本が,「日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」です.


仙台育英 日本一からの招待 [ 須江航 ]

 

今回はこの2冊を読み比べ,大きく3つの共通点を見つけました.

高校野球をピークではなく,社会人になるための準備期間と考えている.

②選手主体で取り組ませる.監督は良いタイミングで適切なアドバイスができるよう,一人ひとりの選手をしっかり見る.

③他者の視点や考えを積極的に取り入れる.

 

順番に詳しく書いていきます.

高校野球をピークではなく,社会人になるための準備期間と考えている.

慶應 森林監督

“学校生活全般,特に部活動は社会に出る前に,たくさんの失敗をするための場所です.(中略)失敗したあとにさまざまに工夫することに意味があるのです.”

 

仙台育英 須江監督

“野球を通じて,内面を磨いてほしいのです.(中略)自分が掲げた目標を,どうすれば叶えることができるのか.仮説,検証,実証のサイクルの中で,うまくいかないことがあれば,その取り組みをもう一度見直して,仮説を再度立ててみる.こうした思考のプロセスは,社会に出たときにも必ず役に立つことです.”

 

お二人とも,かなり近い考えを持っていることが分かります.高校野球を,社会人になるための準備期間ととらえています.また,選手たち自身で考えて工夫してほしいというメッセージを感じました.

 

②選手主体で取り組ませる.監督は良いタイミングで適切なアドバイスができるよう,一人ひとりの選手をしっかり見る.

慶應 森林監督

“選手が野球を楽しみながら取り組めるようにするために,監督,指導者がするべきことは,「選手が何を目指しているのか.その目標に向かってどれほど進歩しているのか」をじっくりと観察することです.”

 

選手が主役であるという考えも共通していました.一人ひとりに合った練習内容を考えたり,成長につながっているかを確認したりするためにも,「観察」が重要なのだと思います.

実際に読むとわかりますが,選手名とチーム内での役割,実際にどう活躍したのかが具体的にしっかり出てきます.両監督とも,選手をしっかり観察して指導されているという何よりの証拠だと思います.

 

③他者の視点や考えを積極的に取り入れる.

慶應 森林監督

“他競技の指導者とも頻繁に会うようにしていますが,それはやはり野球界の常識だけに染まらないようにするためです.”

 

仙台育英 須江監督

“私は勝った時も負けた時も,Twitterを中心にしたインターネットの書き込みを見るようにしています.(中略)第三者仙台育英の試合をどのように見ているかを確認する意図があります.(中略)私も人間なので,事実無根の内容には,腹が立つこともたまにはありますが,それ以上に,第三者の言葉から,新たな気付きや学びを得るほうが圧倒的に多い.”

 

自分の意見にこだわりすぎず,他者の意見を知ろうとする姿勢が共通していると思いました.特に須江監督の,インターネットの書き込みを見るというのは勇気がいるかもしれません.

甲子園優勝という大きな成果をあげても,満足することなく変化をしようとする姿勢も見逃せません.

 

慶應 森林監督

“選手に成長を求める以上,自分自身も指導者として成長していく気概がなければいけません.私自身もそれがなくなれば,指導者をやめようと思います.”

 

仙台育英 須江監督

“「賛同の多いことは時代遅れ」この言葉をずっと大事にしながら指導をしてきました.賛同が多いことは,もう世の中では当たり前のものとして認められている.現状に満足して,その場に居続けてしまえば,改革を起こし,新たな時代を作ることはできません.”

 

この他にも,両監督の指導方法や考えについて書かれています.

良い意味で高校野球の指導者に対するイメージが変わります.また,野球に限らず社会人として大切なこと,人を指導する際に心がけるべきことなど,学びがあります.

気になった方はぜひ手に取ってみてください!


Thinking Baseball --慶應義塾高校が目指す”野球を通じて引き出す価値” [ 森林貴彦 ]

仙台育英 日本一からの招待 [ 須江航 ]