敵はバッタだけに非ず!「バッタを倒しにアフリカへ」

フィールドワークで奮闘する研究者の生活を追体験できる本を見つけました.今回紹介する「バッタを倒しにアフリカへ」です.

前野ウルド浩太郎 光文社 2017年05月17日頃
 
著者の前野ウルド浩太郎さんは,小さい頃から昆虫学者を志し,神戸大学で博士号を取得しました.その後,任期付きの研究職を経て,アフリカでバッタの研究をすることになります.子供の頃からの夢はズバリ「バッタに食べられたい」!
 
本書は,前野さんがバッタの研究をするために,アフリカのモーリタニアへ行き,そこでの経験談をまとめたエッセーです.アフリカではバッタが大発生し,農作物を食い荒らしています.しかし,日本では被害がないため対岸の火事.アフリカで研究をする日本人はほとんどいませんでした.
 
単身アフリカでの研究生活は,予想外の連続です.60年に1度の大干ばつに出くわし,肝心のバッタが発生しません.やっと見つけたバッタの群れが,地雷原へ飛び去ってしまったこともありました.
 
敵はバッタだけではありません.現地人から足元を見られ,正規の2倍の給料で雇うハメになったり,日本からの荷物を受け取るためにワイロを要求されたり.それでも,現地のガイドと協力しながら,たくましく乗り越えていきます.モーリタニアで人の心を掴むための最強アイテムはヒツジでした.
 
研究を続けるためには,お金の問題とも向き合わなければいけません.前野さんは掟破りの広報活動にも取り組みます.ブログ,本,オンライン誌での連載.ニコニコ超会議にも参加します.研究者の仕事は研究だけにあらず.
 
本書を読めば,研究者への尊敬の念が生まれるでしょう.志を持った研究者が心おきなく研究に集中できる制度が必要だと感じました.
 
気になった方はぜひ読んでみてください.