財布の外側に目を向けよう!「お金のむこうに人がいる」

皆さんは,「経済」についてどう思いますか?専門家が難しい理論を語っており,考える気が起きないという方が多いかもしれません.

今回は,専門用語を使わずに書かれた,経済について考えるきっかけとなる本を紹介します.「お金のむこうに人がいる」です.

 

著者の田内学(たうち まなぶ)さんは,東京大学を卒業後,ゴールドマン・サックス証券株式会社へ入社しました.16年間勤務し,現在は金融教育の活動に取り組んでいます.

 

田内さんは,お金ではなく人を中心にして,経済を考えることの大切さを説いています.

お金を中心にし,自分の財布の中にあるお金だけを見ると,お金そのものに価値があると勘違いしてしまいます.

しかし,人を中心に考えると,お金を払って手に入れられるモノやサービスの裏には,必ず誰かの労働が存在していることに気づきます.

 

私が本書を読んで,特に印象に残った内容を3つ紹介します.

①価格=価値ではない.生活を豊かにするのは効用.

②お金は地球上を流れる「水」

③現在の生活は,過去の労働の蓄積の上に成り立つ.

 

①価格=価値ではない.生活を豊かにするのは効用.

効用とは,何かを買って使ったときにどれだけ満足するかです.効用は人によって違うため,測ることが難しいです.そのため,代わりのものさしとして価格が使われます.

価格は客観的で便利ですが,慣れすぎて価格=価値となると,幸せから遠ざかっていきます.効用がなくて価格が高いものを,バーゲンセールなどで安く買うことになります.

 

②お金は地球上を流れる「水」

お金を水に例えると,使った際には色々な場所へ流れていきます.

本文中では弁当が例に挙げられていました.弁当を買うために支払ったお金は,弁当屋へ流れます.さらに弁当屋の店員や,肉屋や農家へも流れていきます.

この水のうち,一部は税金として蒸発し,雨雲になります.税金を集めて使い道を決める政府が,雨雲を操って必要な場所に雨を降らせます.

 

お金の流れをイメージしやすい例えだと思いました.また,単にお金を循環させるだけでなく,人々の幸せにつながる場所にお金を投じることが重要だと感じました.

政府のお金の使い方について注目してみるのも面白いですね.

 

③現在の生活は,過去の労働の蓄積の上に成り立つ.

交通網,教育施設,スマートフォン,医療制度のような仕組みといった,今の生活を豊かにする要素は,過去の労働によって積み重ねられたものです.同様に,現在の労働が未来の土台となっていきます.

国の豊かさを表すためによく用いられるGDP国内総生産)は,1年間で新たに作られたモノの価格の総額です.

GDPはあくまでも1年分で,生活の豊かさの一部しか表していません.またGDPを増やすことにこだわりすぎると,現在にのみ目が向いてしまい,未来の生活を豊かにすることが軽視される恐れがあります.

直近でも,日本のGDPが世界3位から4位に転落しそうというニュースが流れていました.この数字の大きさだけを見るのではなく,将来につながるものがどれだけ生産されているかに目を向けることが重要だと思いました.

 

自分の財布からのお金の出入りだけでなく,そこから視野を広げることで,働いている人や社会へ意識を向けることができました.気になった方は読んでみてください.