歴史に学べ!「世界史を俯瞰して,思い込みから自分を解放する 歴史思考」

歴史を通じて,視野を広げられる本を見つけました.

「世界史を俯瞰して,思い込みから自分を解放する 歴史思考」です.

 

本書では,歴史上の偉人たちの人生を様々な視点から眺めていきます.題材にしている人物は,いずれも教科書に名前が載っている有名人たちです.我々のような一般人とは才能や境遇が全く違うと思うかもしれません.

 

しかし本書のポイントは,偉人達の功績だけではなく,若い頃の失敗談や周囲の人々,時代背景にも焦点をあてていることです.彼らも自分たちと同じ人間なのだと,親近感を持ちながら読み進められました.

 

取り上げられている偉人たちから1人,紹介します.

カーネル・サンダース」は知っている人も多いでしょう.ケンタッキー・フライド・チキンの生みの親です.では,若いころから成功していたのでしょうか?答えはNOです.

 

サンダースがフライドチキンを売り始めたのは40歳のときです.今のようにフランチャイズの専門店を始めたのは65歳のときでした.若いころはフライドチキンと全く関係のない十数の職を転々とし,その間に2度の破産も経験しています.

 

サンダースの生涯から学べるのは,「成功を急ぎすぎない.人生のクライマックスはまだまだ先にある」ということです.

 

著者の深井さんも次のように述べています.

“30代や40代くらいで「成功した」「失敗した」と言うのはやめましょう.不毛です.”

 

世の中の「常識」や「当たり前」の価値観に悩んでいる人にぜひ読んでほしいです.偉人たちの人生や,時代背景を知ることで,「今の常識だけが正解ではない.別の考え方もある」というように視野を広げることができます.

 

敵はバッタだけに非ず!「バッタを倒しにアフリカへ」

フィールドワークで奮闘する研究者の生活を追体験できる本を見つけました.今回紹介する「バッタを倒しにアフリカへ」です.

前野ウルド浩太郎 光文社 2017年05月17日頃
 
著者の前野ウルド浩太郎さんは,小さい頃から昆虫学者を志し,神戸大学で博士号を取得しました.その後,任期付きの研究職を経て,アフリカでバッタの研究をすることになります.子供の頃からの夢はズバリ「バッタに食べられたい」!
 
本書は,前野さんがバッタの研究をするために,アフリカのモーリタニアへ行き,そこでの経験談をまとめたエッセーです.アフリカではバッタが大発生し,農作物を食い荒らしています.しかし,日本では被害がないため対岸の火事.アフリカで研究をする日本人はほとんどいませんでした.
 
単身アフリカでの研究生活は,予想外の連続です.60年に1度の大干ばつに出くわし,肝心のバッタが発生しません.やっと見つけたバッタの群れが,地雷原へ飛び去ってしまったこともありました.
 
敵はバッタだけではありません.現地人から足元を見られ,正規の2倍の給料で雇うハメになったり,日本からの荷物を受け取るためにワイロを要求されたり.それでも,現地のガイドと協力しながら,たくましく乗り越えていきます.モーリタニアで人の心を掴むための最強アイテムはヒツジでした.
 
研究を続けるためには,お金の問題とも向き合わなければいけません.前野さんは掟破りの広報活動にも取り組みます.ブログ,本,オンライン誌での連載.ニコニコ超会議にも参加します.研究者の仕事は研究だけにあらず.
 
本書を読めば,研究者への尊敬の念が生まれるでしょう.志を持った研究者が心おきなく研究に集中できる制度が必要だと感じました.
 
気になった方はぜひ読んでみてください.

名前の由来,知っていますか?「わけあってこの名前 いきもの名前語源辞典」

生きものの名前について考えたことはありますか?

何気なく目にしている名前でも,それぞれにちゃんとした由来があります.

名前の由来が面白い生きものについて,イラストを交えて分かりやすく紹介している本を見つけました.

「わけあってこの名前 いきもの名前語源辞典」です.

タイトルの通り,本書では色々な生きものの名前の由来について,7つのジャンルに分けて説明しています.

①食べ物や住み家,行動,鳴き声などが由来

②気の毒な呼び名

③複数の生きものの名前が入っていて分かりづらいもの

④長くて区切りが分かりにくいもの

⑤見た目そのままの名前

⑥よく知られているが,名前の由来が意外に分からない生きもの

⑦日本語か外国語かよくわからない名前

 

私が特に「へぇ,知らなかった!」と思った生きものを3種類紹介します.

①タラバガニ

食卓に並ぶと嬉しいタラバガニ.

分解すると,「タラ」「バ」「ガニ」です.

「タラ」は魚の鱈.「バ」は場所の場.「ガニ」は蟹です.

魚の鱈の漁場で一緒にとれることから,「タラバガニ」と名付けられました.

 

ちなみにカニの仲間ではなく,ヤドカリの仲間らしいです.これにもビックリですよね.

 

アホウドリ

大きな翼で海の上を飛ぶアホウドリ.漢字で書くと「阿呆」「鳥」です.

地上での動きが遅くて簡単に捕まえられたので,「阿呆」という名前がつきました.鳥に罪はないのにひどい名前ですね.

漢語では「信天翁(しんてんおう)」,英語では「アルバトロス」というらしいです.

日本語と比べるとカッコいい名前がついていますね.

 

カクレクマノミ

ファインディング・ニモ」でもお馴染みのカクレクマノミ

分解すると「隠れ」「隈」の「魚(み)」です.

歌舞伎の化粧である隈取のような模様をしていることからこの名前がつきました.

確かに言われてみると似ていますが,歌舞伎が由来だとは知りませんでした.

 

この他にも,色々な生きものの面白い名前の由来がたくさん紹介されています.

気になった方はぜひ読んでみてください.

人に話したくなります!「くらべてびっくり!やばい進化のいきもの図鑑」

生き物の進化に興味はありますか?

専門的すぎると難しい,あまり興味はないという方にも興味を持ってもらえそうな本を見つけました.

「くらべてびっくり!やばい進化のいきもの図鑑」です.

著者の今泉忠明(いまいずみ ただあき)さんは,動物学者です.

本書の他にも,生き物の面白さを伝える本を執筆されています.

 

本書では,以下の4つに分け,動物の面白くて”やばい”進化について紹介しています.

第1章:今と昔とで「変わりすぎて」やばい!

第2章:昔と「変わらなすぎて」やばい!

第3章:近い仲間なのに「違いすぎて」やばい!

第4章:いきものの社会が「人と似すぎていて」やばい!

 

私が特に”やばい”と思った進化を3つ紹介します.

①カメは昔,甲羅がなかった

②イヌとネコは同じ先祖から進化した

チンパンジーは愛想笑いをする

 

①カメは昔,甲羅がなかっ

カメの甲羅は,あばら骨が発達し,変形してできたものです.

最も古い時代のカメの先祖は,今のカメに近い丸く広がった体型でしたが,甲羅を持っていませんでした.

まずお腹に甲羅を持つように進化し,さらに背中にも甲羅ができていきました.

 

②イヌとネコは同じ祖先から進化した

「え!?」と思いますよね.

イタチのような姿の「ミアキス」という生き物がご先祖様です.

ミアキスは森の木の上で暮らしていましたが,森を出て草原で暮らすようになったものがイヌへ,森に残ったものがネコへ進化したと考えられています.

 

チンパンジーは愛想笑いをする

群れで暮らすチンパンジーには上下関係があります.

自分より強い相手に歯をむき出して笑顔を見せることが「服従」を示します.

人間の愛想笑いと表情も状況も似すぎていて”やばい”ですね.

 

他にも面白くて”やばい”進化がたくさん紹介されています.

気になった方はぜひ読んでみてください.

人生を上機嫌に!「没頭力『なんかつまらない』を解決する技術」

皆さんは,日々の生活の中で,「なんか,つまらない」と感じたことはありませんか?絶望感はないし,生活に苦労はしていないけれど,暇を持て余したり,漠然とした不安を感じる状態です.

このような漠然とした不安を忘れ,よりよい人生を送るためのヒントになる本を読みました.「没頭力『なんかつまらない』を解決する技術」です.

 

著者の吉田尚記(よしだ ひさのり)さんは,ニッポン放送のアナウンサーです.マンガ,アニメ,アイドル,落語などの様々なジャンルに精通しており,アニメやアイドルのイベントの司会もされています.

 

吉田さんは,人生の究極の目標は「上機嫌で過ごす」ことだと言います.そして上機嫌な状態を目指すためには,何かに没頭している時間を増やすことが有効だと考えます.

 

本書では,没頭の定義づけからスタートし,どのようにして没頭する時間を増やしていくかを説明しています.

 

私がこの本を読んで印象に残った没頭するためのコツを3つ紹介します.

①没頭するためには好きなことをする.

②ゴールとルールをはっきりさせる.

③ほどよい不安が必要.ちょっと難しいことに挑戦する.

 

①没頭するためには好きなことをする.

当たり前かもしれませんが,好きなことには没頭することができます.

ここでポイントなのは,没頭できることや没頭するための理由を探すのではなく,何かに夢中になっている自分に気づくことです.時間を忘れて取り組んでしまうことこそが,本当に好きなことだと言えるでしょう.

 

“行為に意味を求めている人は,行為自体が楽しくてやっている人には,絶対に勝てないんです.”

 

②ゴールとルールをはっきりさせる.

例えばサッカーは,決められた枠の中にボールを入れるというルールです.枠からボールが外れると悲しみ,入ると喜びます.枠の中にボールを入れるためにどうするか,考えて動くことに没頭することができます.

ゴールやルールがはっきりしない場合には,自分なりのルールを決めることが大切です.

私の経験ですが,仕事でレポートを作るとき,「1時間以内に5ページ進めたら勝ち!」と決めた結果,いつも以上に集中して進めることができました.

 

③ほどよい不安が必要.ちょっと難しいことに挑戦する.

何かをするとき,簡単すぎると退屈してしまい,難しすぎると不安が勝ってしまって没頭することはできません.自分のスキルより4%難しいことに挑戦するときが一番没頭しやすいという話もあるそうです.

一見すると難しすぎるようなことは,細かく分けることも効果的です.「これならできるかも?」というレベルまで分解することで挑戦しやすくなり,没頭するための程よい難易度になると思います.

 

他にも,没頭するための具体的な考え方や方法について書かれており,すぐに真似することができると思います.気になった方は読んでみてください.

財布の外側に目を向けよう!「お金のむこうに人がいる」

皆さんは,「経済」についてどう思いますか?専門家が難しい理論を語っており,考える気が起きないという方が多いかもしれません.

今回は,専門用語を使わずに書かれた,経済について考えるきっかけとなる本を紹介します.「お金のむこうに人がいる」です.

 

著者の田内学(たうち まなぶ)さんは,東京大学を卒業後,ゴールドマン・サックス証券株式会社へ入社しました.16年間勤務し,現在は金融教育の活動に取り組んでいます.

 

田内さんは,お金ではなく人を中心にして,経済を考えることの大切さを説いています.

お金を中心にし,自分の財布の中にあるお金だけを見ると,お金そのものに価値があると勘違いしてしまいます.

しかし,人を中心に考えると,お金を払って手に入れられるモノやサービスの裏には,必ず誰かの労働が存在していることに気づきます.

 

私が本書を読んで,特に印象に残った内容を3つ紹介します.

①価格=価値ではない.生活を豊かにするのは効用.

②お金は地球上を流れる「水」

③現在の生活は,過去の労働の蓄積の上に成り立つ.

 

①価格=価値ではない.生活を豊かにするのは効用.

効用とは,何かを買って使ったときにどれだけ満足するかです.効用は人によって違うため,測ることが難しいです.そのため,代わりのものさしとして価格が使われます.

価格は客観的で便利ですが,慣れすぎて価格=価値となると,幸せから遠ざかっていきます.効用がなくて価格が高いものを,バーゲンセールなどで安く買うことになります.

 

②お金は地球上を流れる「水」

お金を水に例えると,使った際には色々な場所へ流れていきます.

本文中では弁当が例に挙げられていました.弁当を買うために支払ったお金は,弁当屋へ流れます.さらに弁当屋の店員や,肉屋や農家へも流れていきます.

この水のうち,一部は税金として蒸発し,雨雲になります.税金を集めて使い道を決める政府が,雨雲を操って必要な場所に雨を降らせます.

 

お金の流れをイメージしやすい例えだと思いました.また,単にお金を循環させるだけでなく,人々の幸せにつながる場所にお金を投じることが重要だと感じました.

政府のお金の使い方について注目してみるのも面白いですね.

 

③現在の生活は,過去の労働の蓄積の上に成り立つ.

交通網,教育施設,スマートフォン,医療制度のような仕組みといった,今の生活を豊かにする要素は,過去の労働によって積み重ねられたものです.同様に,現在の労働が未来の土台となっていきます.

国の豊かさを表すためによく用いられるGDP国内総生産)は,1年間で新たに作られたモノの価格の総額です.

GDPはあくまでも1年分で,生活の豊かさの一部しか表していません.またGDPを増やすことにこだわりすぎると,現在にのみ目が向いてしまい,未来の生活を豊かにすることが軽視される恐れがあります.

直近でも,日本のGDPが世界3位から4位に転落しそうというニュースが流れていました.この数字の大きさだけを見るのではなく,将来につながるものがどれだけ生産されているかに目を向けることが重要だと思いました.

 

自分の財布からのお金の出入りだけでなく,そこから視野を広げることで,働いている人や社会へ意識を向けることができました.気になった方は読んでみてください.

自然界は弱肉強食!・・・え、植物も!?「たたかう植物-仁義なき生存戦略」

皆さんは,植物にどんなイメージを持っていますか?

自然あふれる森,美しい花.動くこともなく,平和で穏やかなイメージを持つ人が多いでしょう.しかし,植物は色々な相手とバチバチの生存競争を繰り広げています.

 

そんな植物の戦いにスポットライトを当てて解説している本を見つけました.「たたかう植物-仁義なき生存戦略」です.

 

 

著者の稲垣栄洋(いながき ひでひろ)さんは,静岡大学大学院農学研究科の教授です.本書の他にも,植物や動物を題材にした本を数多く執筆しています.

 

本書では,

①植物 vs 植物

②植物 vs 環境

③植物 vs 病原菌

④植物 vs 昆虫

⑤植物 vs 動物

⑥植物 vs 人間

の6つに分けて,繰り広げられている生存競争を紹介していきます.

 

植物は競争相手に負けないよう,様々な工夫を重ねていきます.競争相手も植物に寄生したり食べたりしないと死んでしまうため,負けないように対策を講じます.この繰り返しで,植物も競争相手も進化していきます.

 

例えば,植物は昆虫に食べられないように,毒を身にまといます.しかし,その毒に耐性を持ったイモムシに効果はありません.すると,植物は化学物質を使って,イモムシの天敵である寄生バチをおびき寄せます.

 

人間相手でも植物は戦います.除草剤によって,雑草は大打撃を受けました.しかし,除草剤に耐性を持つ突然変異体が現れ,生き残るようになりました.

今,人間は除草剤に頼らず雑草の被害を抑えるための方法を考えています.さて,植物はどう対抗してくるのでしょうか.

 

本書を読むと,平和で穏やかな植物に対するイメージが変わります.専門的な内容があってやや難しいですが,豆知識も豊富で面白いです.

リンゴの果実は,モモやカキと上下逆さまらしいですよ・・・

 

気になった方はぜひ読んでみてください.