個性の大切さを自然界から学ぼう!「はずれ者が進化をつくる―生き物をめぐる個性の秘密」

「はずれ者」という言葉を聞いてどう思いますか?他者と合わせられない変わり者,常識外れといったマイナスなイメージを持つかもしれません.

しかし他者との違い,平均値から離れることも重要であると伝えてくれる本を見つけました.「はずれ者が進化をつくる―生き物をめぐる個性の秘密」です.

 

はずれ者が進化をつくる

稲垣 栄洋 筑摩書房 2020年06月10日頃
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著者の稲垣栄洋(いながき ひでひろ)さんは,静岡大学大学院農学研究科の教授です.本書の他にも,植物や動物を題材にした本を数多く執筆しています.

 

この本の前半では,色々な例を挙げながら,自然界では均一ではない色々な個体が生まれること,色々な個体がいる=多様性があることの重要性を伝えています.

例えば,ジャガイモには収穫量が多くて病気に弱い品種や,逆に収穫量は少ないが病気に強い品種など,色々な種類があります.しかし19世紀のアイルランドでは,収穫量を増やすために,収穫量が多くて病気に弱い品種だけを選んで栽培しました.その結果,病気で大打撃を受けてしまいました.

自然界では,平均値から離れた個体が生まれ続けます.環境の変化が起きたときには,そういう平均値から離れた「はずれ者」が適応していきます.生物の進化のために,「はずれ者」が生まれるような多様性が重要となるのです.

 

後半では,生物の多様性をヒントにしながら,「ふつう」「平均値」に収めたがる人間社会の中でも個性を持つことの大切さについて述べていきます.

成績だったり,収入だったり,人間は平均値と比べて高いか低いかと勝ち負けをつけたがります.しかし,そういう競争が全てではない.勝負から逃げてもいいし,勝負に負けても戦い方を変えればいい.

生物の進化も,生存競争の敗者が変化することで進んできました.陸地に上がった両生類は,生存競争に敗れた魚から進化しました.人間の祖先は,森から追い出されたサルの仲間でした.

人間社会の中でも,1つの視点での競争にこだわりすぎず,色々試して時には負けて,変化し続けることが重要であると思いました.

 

世間や周りと自分を比較して気持ちが落ち込んだり焦ったりしている人に新しい視点を与えてくれる本だと思います.気になった方はぜひ手に取ってみてください.

 

はずれ者が進化をつくる

稲垣 栄洋 筑摩書房 2020年06月10日頃
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